モンゴル

馬に乗りたい。突然そう感じました。馬に乗るならどこがいいだろう? 北海道、阿蘇、確か、南房総でも乗れる場所があります。なんとなく決めあぐね、旅の雑誌を開くと「剱岳~点の記」の記事が目に入りました。主演の浅野忠信さんが笑顔で語っていました。ピンときました。そうか、モンゴルだ。

なぜモンゴルなのか? 浅野さんはセルゲイ・ボドロフ監督の映画「MONGOL モンゴル」でも主演しているのです。その日の内に借りてきて、映画を観ました。果てしなく広がるモンゴルの大地に魅了されてしまいました。決まりです。馬に乗るならモンゴルしかありません。遮るもののない草原を風と一緒に駆け巡ること。考えてみると、それは、子どもの頃から願い続けていた夢の1つだったのですから。

ウランバートル郊外、車で1時間半のところに、今回のベースキャンプであるエレステはありました。ゲルに寝泊りしながら、滞在期間中は、1日中、馬に乗っていました。丘に登り、林を抜け、遊牧民のゲルを訪ねました。はじめぎこちなかった馬との関係は少しずつ慣れ、信頼が生まれました。互いを信じ合う度合いが増すごとに馬は走りを速めました。

言葉は通じないけれど、馬は背中に乗せた人間のことがよくわかります。その人の持っている感情は、全てお見通しのようです。特に弱さや恐さには敏感に反応します。馬が自分の言うことを聞いてくれないなら、自分の弱い部分を馬に指摘されているに過ぎません。

「チュウ!」。モンゴル語で「走れ」と叫びながら、ぼくは馬のお腹を蹴ります。馬は一気に加速します。ローズマリーの香り漂う草原を、どこまでも、どこまでも、ぼくらは走りました。走りながら、馬は、何度となく手綱に逆らおうとしました。ぼくは懸命に手綱を握りました。自分の弱さにしがみつきました。

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