琵琶湖


琵琶湖のほとりで、一人、夜明けを待っていました。冷気と静寂。ゆっくりと星の輝きは薄くなり、世界に彩りが再生されていきます。あたりまえのようにぼくの世界に太陽は昇ってきて、昨日と同じように今日がはじまっていく。そのすべてを、心と、身体と、魂で感じ、頭の中に記憶として整理できる。なんという幸せなんだろう。今、この瞬間も、ぼくは生きていることを許されていて、ぼくの世界を絶えずつくり出している。

親子連れ、若いカップル、散歩するシニアの皆さん、釣り人、ランナー、外国から来た観光客・・・ 気づけば、ぼくの周りにはたくさんの人々が行き交い、驚くほどの賑わいになっていました。生命(いのち)のリズム、その躍動が騒がしいくらいにぼくの世界を満たします。それぞれの生命(いのち)が、互いを認識することで共有して、共鳴して、協力しながら今を編み上げる。こうして奇跡は絶え間なく繰り返されているのです。

例えば、妻の手のぬくもり。例えば、息子達の体調不良。例えば、友人からの元気?の一言。例えば、隣人からの耳の痛いアドバイス。例えば、混雑するスーパーのレジ。例えば、ネット上から届いてくる偽りの情報。例えば、世界に溢れるたくさんの痛み。例えば、不意に知る地球規模の異変。嬉しいと感じること。嫌だなと感じること。そのすべてをぼくがつくり出しているという奇跡。

ありがとう。ぼくは、ぼくへと、感謝を贈ります。いつもそばにいて、心臓を動かし、感情を生み、思考を巡らせてくれる、ぼく自身の魂の源泉へと、ありったけの愛を贈ります。ずっと一人ぼっちだと感じていました。心細くて、不安で、どんなに取り繕っても、どこかしょぼくれていて。でも、違いました。気づけなかっただけで、受け入れていなかっただけで、ずっとずっとぼくの中の最高で最強のぼくは、ぼくの日々に寄り添ってくれていました。

琵琶湖に別れを告げた後は奈良へと向かいました。奈良盆地を渦を描くように巡りながら、招かれた土地に挨拶とともに、この20年に対する感謝を重ねました。この日の最終目的地で待っていてくれたのは、奈良からの大いなる恵みでした。旬の食材、澄んだ場の空気、自分を生きるための姿勢、奈良の土地に降り積もった知恵、そして、この先へ向かうための扉。そのすべてをぼくの中のぼくがつくり出し、力を与えてくれている。これまでを、今を、これからを、ぼくのすべてが、ぼく自身によって、肯定されていました。

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