由比ヶ浜

由比ヶ浜

よく晴れた日曜日に由比ヶ浜へ出かけました。朝の海はとても静かで、冷たく澄んだ空気が心地良いです。あたたかい缶コーヒーを両手でくるみ、長い時間、ぼんやりと海だけを見ていました。

ぼくは今年で44歳になります。あとどれくらいの時間がぼくには残されているのでしょう。5年か、10年か、もしくは数日、数時間・・・ 突如やってくるであろう終わりを想像しながら、由比ヶ浜とともに過ごす、まったく意味の無い、なんの生産性も無いこの時間を、とてつもなく愛おしく、そして、贅沢に感じました。

今日、由比ヶ浜はぼくという存在を受け入れ、ただただぼんやりしているだけのぼくを肯定してくれています。誰かに認められるのも嬉しいけれど、土地や山、海といった地球の一部に自分を認めてもらっていると感じられる時間こそが、ぼくにとっての何よりの喜びです。

しばらくすると、カラスがやってきました。艶のある黒い羽根に覆われた美しいカラスは、カー、カーと2つ鳴き、空に向かって大きく飛び立ちました。「先に進む時間だよ」。そんな風に言われた気がしました。ぼくはまた、歩き出すことにしました。