ハワイ島

12年前、ぼくはハワイにいました。大学を卒業したあと、就職場所として選んだのがオアフ島の旅行代理店だったのです。日々、馬車馬のように働き、昼も夜もお客様の対応に追われ、寝る暇もほとんど無いくらいでした。会社勤めをした半年間で、海に入ったのは1度きり。ぼくはハワイが嫌いになりました。日本に帰ってきてからもそれは変わりませんでした。

だから2009年の秋に突然ハワイ島の情報が集まりだしたときも信じられませんでした。信じられないからはじめは無視をしました。でも、人に会えばハワイ島の話をされ、テレビをつければハワイ特集が流れ、待ち合わせ場所に指定されのがクアアイナなのだからたまりません。ここまでされてはハワイを無視できるわけがありません。

南国の楽園ハワイ島。「ビッグアイランド」の愛称で親しまれるこの島には、地球上に存在する13の気候帯のうち、北極気候とサハラ気候を除く11の気候帯があります。東西南北、訪れる場所によってガラリと変わる風景の魅力に、ぼくはすぐ獲りつかれてしまいました。おかしなもので、ハワイのどこが嫌いだったのか思い出せなくなりました。

ハプナ・ビーチで海と遊び、ポロル渓谷の風に揺られ、アカカ滝の大きさに驚き、キラウエア火山のパワーを感じ、マウナ・ケア山からみた空と太陽の美しさに涙を流しました。そう、ハワイ島は美しいのです。すごく厳しいけれど、大きくて、あたたかくて、やさしい美しさが、島のすべてに宿っています。

キラウエア火山から流れ出た溶岩が覆うチェインズ・オブ・クレイターロードを歩いていたとき、なぜだかぼくは走り出したい衝動にかられました。羞恥心というブレーキは一気に吹き飛び、全速力で走りだしたぼくは、同時に、大声で叫んでいました。自分の中にしまい込んで見ないようにしていた想いを、思いっきり、海に、空に、島に向かって叫び続けました。

何かが変わりました。目の前にあるものすべては何一つ変わってないのに、確実に、ぼくの感じる世界は根本から変わっていました。

 

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