鶏龍山(ケリョンサン)

朝から降り続く雪は鶏龍山を白く覆いました。身体だけでなく、心まで震わす冷たさが山に重なります。山頂へと続く森の中で悲しみを聞きました。幼い頃から手放せずにいる馴染み深い悲しみが、ずしん、ずしんと、繰り返し響きます。光を押しつぶすように、希望をかき消すように、低く、重く、今を揺らしました。それでも立ち止まらず、足を前に踏み出します。ただただ冷たさと悲しみに分け入っていきます。

独りで山に入ること、それは、独りで自分自身へと入ることです。日常に溢れる雑音の、その向こうに手を伸ばし、自分の真ん中に在る想い達に触れることです。だから、どんなに小さな山でも、慣れたつもりの山でも、決して軽んじてはいけません。心から敬意を払わなくてはなりません。

山頂でザックをおろしました。ペットボトルを取り出し水を飲みました。瞬間、厚い雲が割れ、空から溢れた明るさが世界に色を取り戻します。頬を包む光は身体の中心まで沁みこんでいきました。悲しみを、冷たさを、やさしく撫でるように。

おすすめ