伊勢神宮

「この世に在るすべてのモノには神様が宿っている」。日本に住む人達は、目に見えない世界への敬いと恐れの念を、そんな風に古くから抱いてきました。伊勢神宮に流れる空気を感じるとき、普段はあまり気にかけないその想いが、しっかりとした輪郭を持ちはじめます。

1500年ものあいだ、たくさんの人達によって愛され、大切に守られてきた場所。その洗練された空気には、言葉にならない力強さやしなやかさ、そして、はかなさが溶け込んでいます。

日々の生活に雑音が増えたとき、ぼくは伊勢神宮を訪れます。お宮の前で目を閉じ、そのままじっと耳を澄ませば、奥深い静寂がぼくの今を包み込みます。

朝5時半。まだ暗いうちにお宮の前まで歩きました。明け方の穢れのない澄んだ空気を胸いっぱいに吸い込み、ぼくの今へといつの間にか積もってしまった滓を吐き出します。ゆっくり、ゆっくり、深呼吸を繰り返します。

外からの音に心が波立つのなら、ただ、自身の動きを止めるだけ。心も、身体も、ふらふらと揺らさず、ゆったりと待つことで、必要なものは自ずと鮮やかになってくるのですから。

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