富士山(初冬)

ピッケルを雪に突き刺し山頂を見上げます。冷たく澄んだ空気をゆっくり、大きく、身体いっぱいに吸い込み、細かく弾む息を落ち着かせました。青い空は笑っています。真っ白な富士山も笑っています。

風がごうごうと唸りをあげ、何度も全身を激しく叩きます。ぶれないように、揺るがないように、身体と、そして、心の真ん中に意識を置き直したら、また、一歩ずつ足を前に出します。右足、左足、繰り返し繰り返し、足を前に出します。

今、ここに在ること、息づくこと。それは、実のところ、自分の意思とは何の関係もありません。どこまでも心臓は勝手に動き、いつか勝手に動きを止めます。そんな限り無い不自由さを無条件に抱きしめるとき、自由は今をかたち作るのです。

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