阿蘇山

ぼくは阿蘇が好きです。外輪山から臨む雄大なパノラマや、高岳を目指す岩だらけのゴツゴツした登山道。草千里ヶ浜を吹きぬける自由な風もいいし、限りなく生まれ続ける湧水の清々しさもたまりません。阿蘇はいつでもそこにあって、訪れる度、新しい驚きを用意しながらぼくを待っていてくれます。

30万年以上も昔、大規模な火山活動により現在の外輪山は形作られました。以後、何度と無く噴火を繰り返した阿蘇でしたが、3万年前には人々や生物が住み着き、1万3000年前の旧石器時代には水の引いたカルデラでも暮らしが営まれていたようです。長い長い時間の中で、阿蘇は数限りない命を育み、同じように、奪い続けてもきました。

阿蘇山は「阿蘇五岳」と呼ばれる5つの山の総称です。高岳、中岳、根子岳、杵島岳、烏帽子岳。一番有名なのは今なお活発に息づく火口を抱えた中岳でしょうか。中岳のすぐ隣には高岳があり、草千里ヶ浜を挟んで合い向かうように杵島岳と烏帽子岳がそびえます。根子岳だけは高岳の東に少し距離をおいてたたずんでいます。

既に登頂済みの高岳と中岳に加え、根子岳、杵島岳、烏帽子岳へと、この日ぼくは登りました。5つの山の頂からは阿蘇の異なる表情を感じられます。目を閉じて、繰り返されてきた生命の営みの面影を求めました。いつまた噴火するやもしれぬ山に寄り添い暮らし続ける理由を探しました。

ビーッ、ビーッ、ビーッ! 旅の終わり、中岳噴火口へと着いた瞬間に、ブザー音がけたたましく響きました。二酸化硫黄濃度が急激にあがり、火口周囲への立ち入りが制限されてしまったんのです。ぼくは、遠く離れた展望所から、火口を眺めました。白い煙が、その勢いを増しながら、絶え間なく吐き出されていました。30万年の時を越え、阿蘇は今も呼吸をしています。変わり続ける地球が間違いなく生きていることを教えてくれています。

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