千畳敷カール

千畳敷のベンチに腰をおろし、宝剣岳を見つめました。ぼくのこれまでとこれからを見つめました。今へと生き抜いた奇跡を、今ここで生きている奇跡を、今から生ききろうとする奇跡を、繰り返し見つめました。山は静かでした。小さなぼくを包むように佇んでいました。

日々を生きること。それは、自分の想いと、そして、その想いに支えられた行為を、少しずつ、重ねていくことです。まず心が震えて想いが生まれます。身体は心の願いに寄り添おうと努め、一秒一秒、「生きる」を繰り返します。心と身体がこわばらず、ゆるやかに同じリズムを刻むとき、自分の「生きる」には、美しい景色が広がります。

大切な人の笑顔、あたたかい音楽、輝く色彩、やさしい食べ物、どこまでも高い空・・・ 美しい景色にはいろいろなものが宿ります。心の透明度があがればあがるほど、先入観から自由になればなるほど、自分の見る景色に宿るものは増えていきます。そして、その景色に宿るすべてが、これから向かいたいと願う景色の方角を指し示してくれます。

これからもぼくは今日のように何度となく立ち止まるのでしょう。積み重ねてきた想いと行為を振り返り、目の前の景色に溶け込む自分を確認する必要があるからです。どこまでもエゴは濃く、ピントは甘いままかもしれません。それでも、向かう景色の輪郭はさっきより鮮やかさを増すはずです。

ゆっくり準備をしなおしたら、もう一度、前を向こう。まだ見ぬ景色と、そこに宿るたくさんの想いに出会うために。

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