台北

ぼくは地図が好きです。世界地図を眺めていると、国や都市、人々の暮らしについて、思いもかけないイメージが湧いてきて楽しいのです。その日何気なく開いたページには台湾がありました。ふと、年末に叔父さんが台湾で山に登ったと話していたのを思い出します。台北近郊の地図に目を走らせ、すぐに「陽明山」という地名を見つけました。台北から車で1時間かからないその山系の最高峰には「七星山(1120m)」と記されていました。
この山には、今、登らなくちゃいけない。そう感じました。日本で季節の移り変わりを示す節分は、台湾では今年ちょうど旧正月にあたっています。春、そして、新しい年がはじまる時のめぐりに合わせ、ぼくは、七星山へと登ることを決めました。
台北ではゲストハウスに泊まりました。中国、韓国、オーストラリアに日本。世界各地から台湾にやってきた人々と知り合いました。旧正月で賑わう台北の街に繰り出せば、見知らぬ方が道案内や食事のアドバイスをしてくれました。片言の共通言語を身ぶり手ぶりで補いながら、懸命に表現し合う想い。生まれる笑顔に、言葉が通じなくても、伝い合える想いは確かにあることを知りました。届けたい、理解したいという、2つの願いが重なる奇跡に、あらためて、愛しさを感じました。
七星山にはゲストハウスで知り合った女性と登りました。まったくの予定外でした。ほんのちょっとした偶然がきっかけになって、彼女の山登り初体験が決まり、ぼくはそれに付き添うことになったのです。昨日までは互いの存在さえ知らなかった誰かと同じ山を歩くためには、いったい、どれくらいの偶然が必要でしょう。神様の気まぐれか、いたずらか、ぼくにはわからないけれど、時に平穏な日々を無茶苦茶に揺さぶる偶然達を、いつも笑って受け止められる自分でいたいです。
そんなことを考えていたら、つい先日数年ぶりに再会した友人からメールが届きました。山に行きたいと書いてありました。また1つ、ぼくの人生に偶然が重なります。ありがとうの気持ちを込めて、ぼくは「喜んで」と返信をしました。










