竜ヶ岳

夜の山を歩いたことがありますか?  ヘッドライトを頼りに足元を確認しながら歩を進めていくトレッキングは、山を包む静けさを身体全部で感じられて気持ちいいです。暗闇はもちろん恐いけれど、それ以上の楽しさやよろこびを見つけることができます。

ぼくのお気に入りのひとつは秋の竜ヶ岳。雲ひとつない夜空の下、深まった秋の澄んだ空気に、真っ黒い富士山のシルエットも、数え切れないほどの星も、くっきりと浮かび上がって素晴らしいです。目の前のオリオン座と背中の北斗七星に挟まれ、大きな富士山を感じながらのトレッキングはしあわせの一言につきます。山も、空も、星も、風も、みんなが「早く登っておいで」と励ましてくれているみたいで、自然と顔がほころびます。

夜明け少し前、頂上へとたどり着きました。ザックをおろし、富士山を眺めていると、裾野がだんだんとオレンジに染まっていきます。色を取り戻す世界。誰もいない山頂で淹れたてのコーヒーを飲めば、よろこびがじんわりとぼくを包みます。

星空の下を歩いていると、暗闇の中でも見えてくる光は、いくらでもあるんだと感じます。焦らずに立ち止まり、ゆっくりと目を凝らすなら、今まで感じられなかった輝きが、自分へとたくさん注がれていることに気づけます。

そして、何より、朝は必ずまたやってくるのです。あたり前のようにはじまっていく新しい今日。これまでと、これからの間で、ぼくは「ありがとう」とつぶやきました。

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